こんにちは、放射線技師の「あき」です。
今回は「放射線技師は被ばくの影響で早死にするのか?」というテーマです。
結論から言うと、僕の意見としては「早死にするどころか、むしろ長生きする可能性だってあるよね」という内容です。
放射線技師は医療現場で放射線を浴びる機会があるため、「放射線技師はがんになりやすい?」「妊娠しにくい?」「子どもに影響する?」のような不安の声をよく目にしますよね。
その答えとして「放射線技師の被ばく量は微量であり、健康被害が起こるほどではない」という内容のものがほとんどだと思います。
もちろんその通りですが、他では語られていないひとつの可能性として、むしろ放射線技師は長生きするかもしれない、という切り口でお話ししていきます。
ぜひ最後までご覧くださいね。
診療放射線技師(30代男性・1児の父)大阪大学卒。総合病院→他職種→企業内健診→健診クリニック。当サイトで現役技師や学生向けのコンテンツを発信。
放射線技師は早死にどころか長生きする可能性もある
放射線技師の被ばく量は微量だから早死にする心配はいらない
この記事にたどり着いた方は、「放射線技師になることで被ばくによる健康被害があるかもしれない」という不安を感じていると思います。
ですので、まずは「放射線技師という仕事を通しての被ばくを心配しなくていいですよ」というお話をします。
他のサイトなどでもよく言われていることですのでご存知かもしれませんが、放射線技師は仕事上での被ばく量を測るために「線量計」というものを身に着けます。
この線量計によって、毎月どれだけ被ばくをしているかを数値で確認することができるのです。
被ばく量の上限については、法律でしっかりと定められているので、万が一被ばく量が限度を超えるような働き方をしていた場合は、放射線被ばくをする業務からは外れることになります。
ひとえに放射線技師といっても、担当する業務には幅があり、
- 被ばくが比較的多い検査(血管造影など)
- ほとんど被ばくしない検査(レントゲン・CTなど)
など様々ですが、どの業務についたとしても被ばく量が限度を超えることはほぼありません。
ちなみに、僕はいままで血管造影を担当したり、患者さんを介助しながらのCT検査なども行ってきましたが、毎月の被ばく線量はわずかであり、多くの場合は「検出限界以下」という結果でした。
医療機関ごとに働き方はさまざまですので、どれくらい被ばくするかは人によって変わります。
ただ、健康被害を心配しないといけないような被ばくをすることはありませんので、心配する必要はありませんよ。
放射線ホルミシスによって早死にどころか長生きするかも
ここまで、「放射線被ばくによる健康被害を心配しないでいい」というお話をしてきましたが、ここからは「むしろ放射線被ばくによって長生きする可能性もある」という内容です。
僕が「放射線技師はむしろ長生きするかもしれない」という説をとなえる根拠は、この書籍にあります。
『人は放射線になぜ弱いか -少しの放射線は心配無用-』近藤宗平(著)ブルーバックス
著者である近藤宗平氏は、
- 国立遺伝学研究所室長
- 大阪大学医学部放射線基礎医学教室教授
- 近畿大学原子力研究所教授
などを歴任されてきた方で、学生時代には兄弟原爆物理調査班の一員として、原爆投下直後の広島の調査なども行われています。
いわば、放射線被ばくに関してのエキスパートですね。
この書籍では、以下のような記載があります。
微量前処理照射による染色体異常の防護効果
ヒトの抹消血の細胞を試験管にいれて、X線で一ラド程度照射する。そうすると、あとで中程度の線量を照射したとき、染色体異常の発生がかなり抑制される。<中略>この防護効果の原因は、防護遺伝子が、微量被ばくを察知して、防護タンパクの生産を開始するためのようである。
(※1ラド:=1cGy)
このように、放射線がホルモンのような働きをすることから、この現象を「ホルミシス効果」と言います。
人類はかなり昔から自然放射線が存在する環境のなかで暮らしながら何世代も遺伝子を受け継いできており、微量の放射線被ばくによる障害には対処できるように進化してきている、というわけです。
書籍のなかでは、この説を後押しするためのエビデンスがほかにも多く紹介されています。
通常のレントゲン検査など、医療の診断領域で使用する放射線は、自然放射線を大幅に上回ることもありません。
放射線技師が被ばくするのは、基本的に患者さんに照射されて発生した散乱線によるものですから、なおさら被ばく量は少ないと言えます。
放射線被ばくを心配する必要がないどころか、むしろ防護タンパクが多く生産されて身体が丈夫になる、というのは、にわかに信じがたいことですよね。
ですが、そういう研究結果が出ている以上、放射線技師として働きながら被ばくすることによる健康被害をむやみに怖がる必要はないでしょう。
ただ、このホルミシス効果とは逆の研究結果も示されている例はありますので、「放射線技師は被ばくによって長生きするかもしれない」というのは、あくまで可能性の話です。
まとめ:放射線技師が早死にする心配はない
あくまで研究段階の話で、まだ分かっていない部分も多いのが事実ですが、放射線ホルミシスによって放射線技師がむしろ長生きする可能性は十分にあります。
個人的には、放射線技師の被ばく量と寿命の関係について、長期的な研究がされていったら面白いなと感じています。
日本では原爆の被害や原発事故によって、「放射線=恐怖」というイメージがかなり浸透しているため、放射線を扱う技師の健康被害を心配してしまうのも無理はないですよね。
ですが、被ばく量については線量計で管理しており、放射線技師が医療現場で放射線を浴びることによる健康被害が生じるということはまずありません。
せっかく放射線技師という仕事に魅力を感じているのなら、健康被害の不安を理由に諦めるのはもったいないと思います。
どれだけ「健康被害はない」「大丈夫」という意見を聞いても不安が拭えない方は、より被ばくする機会の少ない健診クリニックへの就職を検討してみてはいかがでしょうか?
僕自身、いまは健診クリニックで働いていますが、充実した毎日を過ごせていますよ!(被ばくが心配で選んだわけではありませんが)
就職や転職については、僕の経験をまとめた「放射線技師の就職 必勝マニュアル」がありますので、これから放射線技師の転職や就職を考えている方は、ぜひご覧くださいね。
僕のリアルな成功体験からまとめた方法ですので、きっとお役に立てると思います。