こんにちは、放射線技師の「あき」です。
今回は「放射線技師の仕事はAIに奪われてしまうのか?」というテーマです。
結論としては、AIが放射線技師の仕事すべてをこなすのは難しく、あくまで技師のサポート役としてAIは活躍するだろうという見解です。
現役の放射線技師として現場で働いている僕の意見をまとめてみましたので、ぜひ最後までご覧くださいね。
診療放射線技師(30代男性・1児の父)大阪大学卒。総合病院→他職種→企業内健診→健診クリニック。当サイトで現役技師や学生向けのコンテンツを発信。
放射線技師の仕事はAIでなくなることはない
放射線技師の仕事は、AIによってなくなることはないと僕が主張する理由は、次の3つです。
- AIでは技術的に難しい場面が多い
- 法的な責任をAIは取ることができない
- 患者心理としてはAIロボットによる介助は受け入れがたい
それぞれについて、詳しくお話ししていきます。
理由① AIでは技術的に難しい場面が多い
この「技術的に難しい」という主張は他のサイトなどでもよく言われることですが、僕なりの意見としてまとめておきますね。
放射線技師の仕事は、AIがいくら発達しても簡単に奪ってしまえるほど単純な仕事ではありません。
「スイッチマン」なんて揶揄されることもある放射線技師ですが、とても複雑な業務をこなしているのが実情です。
検査を受ける患者さんは、ひとりひとり個性があったり、ハンディキャップがあったりと、機械的な単一の対応では検査がうまくできない場合が多いです。
例として、放射線技師のベーシックな検査である胸部レントゲンを考えてみても、以下のようなことが考えられます。
- 高齢で立位をキープできない
- アゴを上げられない
- 五十肩で両腕の挙上できない(側面撮影)
など、患者に合わせて臨機応変にポジショニングをしたり、必要に応じて介助をすることになります。
患者さんの状態を見極めて、できるだけ苦痛のない姿勢で検査を終えられるように、放射線技師はいわばオーダーメイドの対応をする必要があるわけです。
このような臨機応変な対応は、AIロボットがいくら発達しても、なかなかクリアすることができないだろうと予測できます。
そのため、放射線技師の仕事をAIが奪うことができない理由の1つ目として、「技術面」を挙げました。
とは言うものの、科学はわれわれの予想をはるかに超えるスピードで進歩していきますので、僕が挙げる3つの理由のなかでは、この「技術面」が一番最初にクリアされてしまう可能性はありますね。
理由② AIは法的な責任が取れない
2つ目の理由として、検査でなにか問題が起こった際に「AIは法的な責任を取ることができない」ということを挙げておきます。
仮に技術的にAIロボットが放射線技師のかわりに胸部レントゲン検査を完全に行えるようになったとしても
- 無理なポジショニングをさせて患者さんがケガをした
- オーダーと撮影内容が間違っていた
- バグにより過剰に放射線を浴びさせてしまった
などのミスが起こった際、誰が責任を取るのかという問題があります。
AIロボットのミスのより患者さんがケガをしたとしても、AIロボットの開発者が責任を取るというのは無理な話でしょう。
技術的にAIロボットが単独で検査できるようになったとしても、やはりその検査を監視するための放射線技師は必要になるのではないでしょうか。
これは、車の自動運転と同じようなケースだと思います。
AIにより自動で運転できるようになっても、事故が起こった場合に責任を取れるドライバーは必要ですよね。
診療や読影を完全にAIに任せることはせず、医師の存在を欠かすことができないのも、同じような状況かと思います。
そして、AIに全面的に業務を任せようとした場合、法律の改正も必要になるでしょう。
この法律の改正はヒトが行うことですので、いくら技術の進歩が早くても、法律の改正には時間がかかります。
AIによる失業を避けるために、国が法改正を積極的には進めない可能性もありそうです。
これらの観点から、放射線技師の仕事をAIが奪う可能性は低いと言えます。
理由③ AIによる介助は患者心理的に受け入れがたい
3つの理由として、「患者心理としてはAIロボットによる介助は受け入れがたい」ということを挙げておきます。
仮にAIロボットにより撮影業務すべてにおいてヒトである放射線技師がいらなくなったとしても、患者さんは技師によるサービスを受けたいのではないでしょうか。
- 不調によりメンタルが落ち込んでいる
- 痛みがあり、優しく介助してほしい
と感じている患者さんは多いです。
ロボットによる介助よりも、放射線技師による温かみのある対応のほうが喜ばれることは間違いないでしょう。
(ぶっきらぼうな対応をする放射線技師は論外なので、ここでは割愛します)
結局のところ、医療現場の在り方を決めるのは患者さんです。
仮に技術・法律が整って医療現場にAIロボットが導入されても、患者さんがAIロボットを嫌がって放射線技師の温かい対応を受けられる病院に人気が集まれば、AIロボットは普及しないでしょう。
これは、工場での大量生産ができるようになった現代において、
- ハンドメイド雑貨
- 手ごねパン
- まごころを込めた店内仕込み
などに価値が見出されているケースと似たような状況になるのではないでしょうか。
自分の家族や友人が病気になって検査を受けることになった場合、「AIロボット」と「ヒト」
のどちらが検査を担当してくれるほうが安心できるかは、一目瞭然かと思います。
このような観点から、AIが放射線技師の仕事を奪うことは難しいと考えます。
10年後の医療現場は今とあまり変わらないのでは?
進歩のスピードが凄まじい技術面がさておき、法律面や患者の心理面を考えると、AIロボットが医療現場に普及するまでには、かなりの期間がかかると思います。
仮にAIロボットを積極的に活用していくとしても、まずは最先端の大学病院から試験運用がはじまり、大規模な病院から徐々に医療界全般に普及することになるでしょう。
それまでにはかなりの年数が必要になるので、なんだかんだで10年後の医療現場にそこまで変化はないだろうと推測できます。
まとめ:放射線技師とAIで役割分担されていく
これまでにお話ししてきたように、放射線技師がAIロボットに勝る要素の "最後の砦" は「温かみのある患者対応」にあります。
AI技術の進歩は目覚ましく、いずれ画像処理などはAIがどんどん活用されていくでしょう。
その分だけ、ヒトである放射線技師が対応すること自体に価値を見出される時代がくるかもしれません。
国家資格という公的な権威も相まって、放射線技師の仕事すべてをAIが奪うことは考えにくいです。
放射線技師の養成学校はどんどん増えているため、就職におけるライバルたちから抜きんでるためには、より人格面の優れた放射線技師を目指すべきだと言えます。
放射線技師を目指すかどうか悩んでいる学生さんには、ぜひ目指してほしいです。
放射線技師は将来的になくなるような仕事ではないですし、やる気があればいくらでもスキルアップできる素晴らしい職種です。
放射線技師を続けることに不安を感じている技師の方は、その不安を払拭できるくらいスキルアップを目指してみてはいかがでしょうか。
仮にAIに仕事が奪われることがあったとしても、それはスキルのない技師からです。
もし今の環境に不満があるなら、ぜひ思い切って自分に合った職場を探してみてください。
転職や新しい環境に飛び込むことで、放射線技師としてのやりがいや働きやすさがグッと変わることもあります。
僕がまとめた「放射線技師の転職&就職マニュアル」も、きっと役に立つと思います。興味があれば、ぜひチェックしてみてくださいね!
僕は転職を通して、放射線技師として前向きに働ける環境に出会うことができましたよ。